順方向電圧と理想ダイオードの話。基礎編

ダイオードは低電圧に弱い。

ダイオードには順方向電圧というダイオードの動きの原点となる電圧があります。
そして型番によりバラバラですし、実デバイスで測定しても厳密にはバラツキがあります。
シミュレーションで入力AC0.5Vで見てみましょう。
 
DiodeにAC0.5Vを流してみたら出力波形が歪む

 
低い電圧では調子よく動いてませんね。三角波でもなくPWM25%みたい。
これがサウンド関係のエフェクターだったらどうでしょう?
小さい音が矩形波っぽくなって、ビットクラッシャーのようなジリジリ音になります。
解決策としては、ダイオードに正確に働いてもらうには順方向電圧より上の電圧までバイアスをかけて入力の基準点を引き上げればより正しい波形が得られます。
バイアスをかけて順方向電圧までの動作を逃れるテクニックがわるいとは言いませんが理想を求める事も必要です。技術者にとって省略もロマン。理想もロマン。
  • 順方向電圧+(V/2)位バイアスかければ音は綺麗。
  • そのままで歪むのを容認する。
 もちろん今まで見てきた回路図は全て前者でした。

市販の理想ダイオードは「電源用理想ダイオード」

秋葉原で売られているのは・・・

https://akizukidenshi.com/catalog/g/g107919/

電源用ですから用途と違いますねぇ。
実デバイスの理想ダイオードの中身はMOSFETを使った理想ダイオードがほとんどでオーディオ用途とはちょっと違いますのでデータシートをよく読んでから使いましょう。

オペアンプで作る理想ダイオードとは?

理想ダイオードはオペアンプの回路例として本で見たのが最初です。
オペアンプは両電源で0V付近の動作をほぼ正確に増幅することが出来るデバイスですから、考えた方は誇らしいでしょうね。
シミュレーションで見てみましょう
 


2つの負帰還アンプです。
右のオペアンプの1kは左の1kがあるので反転出力です。
左のオペアンプの負帰還に抵抗での魔法とダイオードが使われています。
つまり反転アンプの入力が-時は+出力。+時は左のオペアンプで極性を反転してしまう回路です。
凄いのはこのダイオードの順方向電圧は気にしなくてよいのです。LEDでも良いのです。
入力を0.01VACにしてももまともに動きます。
 
ちなみに10kを1kや100kでもいいの?と言われたら答えはYesですが、100k辺りからオペアンプの+-端子間のC成分の関係で発信しますので1k~10kにするのが設計として正しいです。
発信すると周りのコンデンサーが「チュイーン」とか鳴るので急いで電源を切りましょう。多くの部品が壊れますので覚えておきましょう。
 
この回路の制限事項
実際のダイオードは逆接続できるがオペアンプだと逆接続出来ない。2つのダイオードの極性を反転すると逆接続と等価になります。
値段がちょっと高い。
両電源を与えないと動かない。
 

何に使う?

難しい。
  • リングモジュレーター。 

ここまでのまとめ

  • 低電圧におけるダイオードは波形が尖って雑音が多い。これは特性であり電圧を上げる事で回避は出来る。
  • 理想ダイオードはオペアンプで作ると両電源は必要だが相当追い込める。まさに理想
  • でも使いどころがないのが現実。 
リングモジュレーターに随分大げさな回路、しかも両電源。いやいや、ダイオードにゲルマニウムを使うより更に上ですから。乗算の小数点がきっちり演算できてますから。そうしないとBob Moog, Don Buchlaに並びませんよ。
 
ちなみにオペアンプとコンパレーターって型番も似たようなものだしどちらが先に開発されたと思います?

A:オペアンプの方が先に発明されました。

  • オペアンプ:
    • 1940年代に真空管を用いたものが開発され、その後トランジスタ、集積回路(IC)へと進化しました。
    • 演算増幅器(Operational Amplifier)の名の通り、元々はアナログコンピュータでの演算処理を目的として開発されました。
    • 信号の増幅、フィルタリング、演算など、様々な用途に用いられます。
  • コンパレーター:
    • オペアンプの技術を応用して、1960年代頃に専用のコンパレーターICが開発されました。
    • 2つの入力電圧を比較し、その大小関係を出力する機能に特化しています。
    • アナログ信号のデジタル信号への変換や、閾値判定などに用いられます。
つまり、オペアンプの技術が先に確立され、その後にコンパレーターが開発されたという流れになります。
uA741CPは20個トランジスターが入ってたとして真空管20本かぁ~。デカい!
 

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