みんな大好きArp Odyssey
電源を入れたらいい音が出る不思議なシンセ。その秘密は実はコストダウンにありました。
はい、おしまい。
ではありません。
あの独特なRing Mudulator音は矩形波をCMOSのNAND回路とダイオードとトランジスタで出来ています。
CMOSのNAND回路?NAND回路は万能だからXORでも作ってるの?01と10だけ1にすればいんですよね。
それ以前に矩形波なんだ。ふぅん。
ではありません。
実際の設計においてはVCOの矩形波の電圧値とCMOS NANDのHighの時の電圧を同じにしなければいけません。
これは実はTTLでは簡単ですがCMOSでは電圧を狙って設計しないと作れません。
しかも軍用高速Ver.のCMOSです。
しかも何故かゲルマニウムダイオード?
でも高速トランジスター?
VCO1,2の矩形波はTTL出力です。
推理小説の様に謎が多い回路なのです。
オリジナルの回路図から解析
高速なCMOS NANDといってもTTLのNANDのスピードには勝てません。
古いダイオードも現代においてはスピードも遅く、漏れ電流も多く、Vfが低いだけです。
しかも中点から電圧を取り出すなんて4つの150kΩはMatchedでないといけませんね。
ということは2つのダイオードもMatchedでないといけません。
たしか15Vで動いているので最後のR75,R79の22kΩもMatchedすれば中点でつりあいます。ですがいくら中点を作るためとはいえ値が低すぎて消費電力が上がっています。私なら56kΩ以上にしたいです。
待ってください。R103,R104,Q18以外すべてMatched Pairという精度に気が付きましたか?
待ってください。これリングモジュレーターじゃなくてXORです。そもそも乗算じゃないですよ。
ここから話は横道にズレます。
TTLって速いですよね。何も考えないと74LS系がLogic ICの標準と思っていますよね?(Y/n)
LSって何の略語か知ってます?(y/N)
以下AI解説お願いします。
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74LSシリーズの「LS」は、Low-power Schottky(ローパワー・ショットキー)の略です。
これはICの内部構造(回路方式)を表しており、当時の標準シリーズ(74シリーズ)に比べて、次のような特徴を持っています。
Low-power(低消費電力): 消費電力を大幅に抑えている(標準品の約5分の1)。
Schottky(ショットキー): 内部のトランジスタに「ショットキーバリアダイオード」を 組み込むことで、電気的なスイッチング速度の低下(蓄積時間の遅れ)を防ぎ、高速化している。
つまり、「従来のスピードを維持したまま、省電力化したバランスの良いIC」という意味で、1970〜80年代以降のデジタル回路で爆発的に普及しました。
ちなみに、他にも以下のようなシリーズがあります。
74S: Schottky(高速だが消費電力が大きい)
74ALS: Advanced Low-power Schottky(LSをさらに高速・省電力化した進化系)
74HC: High-speed CMOS(現在主流の、さらに省電力なCMOS版
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でも12Vは扱えないので純粋なCMOSの4000系は生き残っているという事です。
ここから話は戻ります。
次に矩形波なのに中点を多用する謎を解くために波形を観てみましょう。
リンクはこちら。
なんということでしょう。High,Lowの信号二つの中点部分の信号はHigh,Mid,Lowの2ビットになります。
こうなると技術者の視点はZ1b,Z2bのスピードとただのR101,R102の作るスピード差を無くしたいと考えるのは納得できます。
こりゃCMOS使わないほうがラクだぞ。(この話は後程)
150kΩも100kΩのほうが入手も精度も値段も安い。
ダイオードの役割はOR回路で高速に2.5Vと5Vに反応してくれればいい、低漏れ電流や低Vfや高耐圧である必要はない。ともかくORしてトランジスターをスイッチングします。技術者の立場なら速くて5Vで使えれば問題ありません。
トランジスターはダイオードから2.5Vがくると動作としてはLowです。2.5Vではなく5Vになった時トランジスターはHighとなります。
結果2.5Vから4V付近の出力が得られます。
これが解析結果です。
これでどうしてこうなったか、部品の性能値の確認が出来ました。
ダイオードは高速なもので充分。
MOSFETでもアナログSWでもコンパレーターでも高速なら使えますね。
あまり高速だとオリジナルからかけ離れますが、Arpの思想を加味してやればそれはArpの望んだ音になると思います。
CMOSのNANDは供給電圧でHighの電圧とスピードが変わりますのでそこは要注意です。
速度的な再現性でいうと東芝のTCが同じくらいです。
こだわらなければTTLの速いNANDで代替可能ですね。よかったよかった。
速度(伝搬遅延時間:tpd)の比較
| 動作電圧 (VCC) | 4000B シリーズ (標準CMOS) | 74HC シリーズ (高速CMOS) | 速度の差 |
| 5V 動作時 | 約 120 ns〜150 ns | 約 10 ns〜15 ns | 約 10倍 74HCが速い |
| 10V / 12V 動作時 | 約 50 ns〜60 ns | (5V超は動作不可) | — |
| 15V 動作時 | 約 40 ns | (5V超は動作不可) | — |
いや、NAND回路ではなくExclusive-OR回路を作ってるのだから74LVC1G86の4.0nsが最強か?
これも間違い。そもそも設計者は最初からXORを使わず、Matched Pairを贅沢に使い中点と高速処理回路を作っているのです。つまりこれは矩形波以外の5V波形が使えるように作られているのです。
Yes!
どうです?これはLogic ICを1個では作れませんね。
じゃぁNAND最速の74LVC1G00の4.0nsが最強か?
ほぼ正解でしょう。
なぜなら2入力NAND回路ではありますが入力の1つは常にHighです。
つまり正体はNOT回路なのです。
じゃぁ 74LVC1G04の1.6nsです。
はい、やっとArpの理想に近づいた気がします。
今回は応用編も書きますね。
もしもこのNAND(NOT)回路の音が気に食わないと叫ぶユーザーがいたらどうしますか?
1.このユニークなRing Modulator(XOR)はこれが到達点だと説明する。
2.秘密の改造回路を教える。
3.暴力で解決。
NANDだのNOTだの矩形波が出来てしまうのでオペアンプにしてしまいましょうか!
この応用が出来る人は、ちいかわの「草むしり検定二級」でしょう。
![]() |
| 反転増幅+BIAS2.5Vで00が5Vで11が0Vでその他2.5Vというアナログ演算回路です。 |
さすがアナログ。きちっとした値になりません。そこがいいのです。
出力を反転して原音とMixすると打ち消しあって原音が消えるのであまり必要では無いけど面白いと思います。
トランジスターも変えろ?それはお任せします。
次に2つのVCOが0Vに近いとき音が漏れるように中点をずらしてみますか。
技術者が真面目に不完全なRing Modulator(XOR)を設計するのです。
こんな感じです。入れ替えて遊んでみてください。シュミットトリガーのほうが音が柔らかいのが意外です。
随分酷いですが音はいいです。
ぁ、2段ボリュームで2出力も漏れを楽しめたらユニーク過ぎて面白そうですね。
普通のRing Modulatorは完全を目指しDSPの演算で終焉を迎えますが、これはPost-RockというかDSPで演算するには大変なPost-Synthsizer Moduleの領域ではないでしょうか。
爆田研ならXOR回路をどう考えるか
コストダウンを考えてRingmodulatorをXORで問題なしとしたArpの技術者の決断ですが現代においてはXORと乗算器の結果は厳密には集合の演算と掛け算と別物です、しかし音色的にはほぼ同じです。
DSPで作る静かなRingmodulatorよりXORのほうがワイルドです。
オペアンプの世界でXORを実現するには2通りあります。
1.LOGIC(集合・論理)で実現する方法。世界が0~10Vの値なら。
A--\
(SUM)-----------\
B--/
(Subtract)=Answer
A--\
(Minimum)--x2/
B--/
2.音エネルギーで実現する方法。世界が-5~5Vの値なら。
A--\
(Subtract)--(Absolute)=Answer
B--/
圧倒的に2.ですね。Minimum演算(波形の共通部分)の音も面白いですよ。
数学的には負方向に振れればMinimumですが
音的波形では0V基準で最小値になります。
![]() |
| スイングしすぎがあるのでリニアリティを微調整しています。 |
さらに単電源タイプのクセを活かして0Vに向かって波形を叩きつけてダイオードを無くしてみました。
![]() |
| まさにパズル。 |
これでArp Odyssey 2820 タイプと爆田研の高精度Analog XORの2つが楽しめました。
今度こそ
はい、おしまい。






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