液晶ディスプレイの修理はOLED化がいいのかLEDバックライト化がいいのかELシート交換がいいのか?

まずは液晶ディスプレイのトラブルから説明しよう(OPTREX DMF5005Nを例に)

  •  バックライトがどんどん暗くなります。

これはELシートの劣化です。蛍光灯のように交流電源で光る為、直流を高周波発信させています。(ちーと鳴るのはこれが原因)寿命は3000~3500時間です。

紫外線に弱く、屋外使用で寿命も短くなります。 点灯時、空気に触れると寿命が短くなるらしいのでラミネートがかかっているのはそれが理由らしいです。

交換すればまた3000時間は使えます。

時代が進み液晶ディスプレイのバックライトにLEDを採用するようになりましたがLEDは面で発光するわけではないので光学的に屈折、反射の仕組みが必要で、結果として縦横のサイズは同じでも3~4mm厚くなってしまいました。 

  • 裏にある小型電解コンデンサが壊れます。

寿命が1000時間です。運が良ければまだ液漏れせず性能が低下しているだけの状態になっているはずです。中身がアルミと液体ですから、量も少なければ性能も落ちやすいので普通の電解コンデンサーの寿命の半分です。(FDDにも使われている厄介者です)

これが壊れると液晶表示チップが調子悪くなるので線が消えたりノイズが入ったり表示がバグったりと悪くなるばかりです。既に壊れている場合、修理しても改善しない可能性が高いです。

  • 物理的に壊れるケースもあります。

珍しいケースではネジを強く締めすぎて(あるいは全面パネルに強く押しつけ過ぎて)物理的に鉄フレームにテンションがかかると鉄フレームの中にシリコンゴムの接点が100本以上ありまして、これの接触不良が起きて半分映らなくなったり線で抜けたりとコンデンサー不良と見分けのつかない症状になります。

ただし、取り外して鉄フレームをトントン叩いたりしてかなり改善する場合は劣化ではないし、まだ使えそうです。

外してもなお不完全な場合は鉄フレームを外して組み直すのですが、指紋が付かないように手袋をして100本以上の接点に対して均一に正確な位置で対角線方向に締め付けが必要でして、時間と暇と運があれば治ります。私なら「両面テープで張り付けてあるELシートをどうしても除去したい」「反転液晶にしたい」「好奇心を満たすため」といった理由が無い限り時間がもったいないので交換します。

液晶全般のトラブル

液晶共通の問題です。直射日光に弱く、最悪の場合真中から液晶が反転し、焼け焦げたような状態になります。

高温による「液晶焼け」と呼んでいますが液晶の「液」が劣化するものですので治せません。 ヤフオクでTR-505やTR-707に液晶焼けのジャンクを観る事が出来ます。

OLED全般のトラブル

残念な事に寿命が30000時間なのに140時間で焼付きが起こり、電源を消すと痕が残ります。楽器の性質上表示が頻繁に変わらないので結構致命的です。

熱で寿命が短くなります。液晶に比べ発熱してしまうので多くの面積を光らせておくと寿命も短くなります。実質3000時間で交換ではないかと予想する方もおられます。時が経てば歴史が証明してくれるでしょう。

意外と野外で見えない状況になります。液晶も見えないですがOLEDもダメな時はダメです。日さしで影を作る工夫は必要です。

LEDバックライト化のメリットとデメリット

厚みが増した事でZ軸方向にネジ位置がずれてしまうので厚みを考慮しない設計の楽器には取付け出来ません。DX21とかDX100とか。楽器側のフレームを曲げたりしないと取り付けられません。

コントラスト調整も改造が必要です。コントラストは0~5V等何かしら電圧調整する仕組みで出来ています。そのまま取り付けるとなぜか液晶が薄すぎて見えなかったりする事があります。ちゃんと映っている事もあるのでメーカーによる規格違いではないでしょうか。

楽器によってはD/Aでコントロール出来て、その先にOpAMPで回路が組まれている場合、マイナス電圧を出力できれば反転液晶改造も出来ます。w5,w7はOpAMPの定数変更で、正転・反転両方出来るミラクルな改造が出来ました。簡単なのは見えるところで固定してしまう事です。半固定抵抗という部品を付けるだけです。頻繁に変化させるものではありませんからこれで充分です。

ケーブルを新しくしないといけません。ただの線でいいなら20本の線と2本のバックライト用の5V(20本の中に5Vがあるのでそれを配線します)を本体基板と繋げれば動作します。

SY77は20Pinフラットケーブル、長さ150mmをLCDに直付けしている為にフラットケーブル部分を作り直さなければなりません。 私は専用工具を持っているので何も問題ありませんが一般的には美しく仕上げる事は出来ません。

OLED化のメリットとデメリット

OLEDはドットそのものが光ります。ですからコントラストが高く、視野の範囲が広く、コントラストの設定が要りません。発色の選択も多岐にわたります。

バックライト電源不要で改造個所が少なくて済みます。サイズは液晶より薄くなる傾向があります。

文字タイプの液晶ユニットの交換しか出来ません。(DX7やαjuno等)グラフィックタイプはドットが小さ過ぎて解像度が合いませんので製品自体が存在しません。

LEDバックライトのケースと同じケーブルの問題があります。両方とも別のパーツを取り付けるのですから厚みやケーブルの問題は避けて通れません。

ELシート交換のメリットとデメリット 

蛍光灯を交換したようなものなので改造ではありません。部品交換です。コントラストの調整も必要ありません。ELシートが両面テープで張り付けてあるので無理に外そうとせず電気的に外したら重ねて取り付けます。重ねても充分な隙間はあります。

同じ年数で暗くなります。小型電解コンデンサーも出来れば標準の大きさの物と交換してしまえば倍寿命が延びます。ネジ止め部分は空間は無いですがそれ以外は熱の問題もあるので空間が空けてあります。

ELシートのサイズと色の選択肢が少ない。自由に切断出来るものがありますが裏にある電極の長さが確保出来ないとバックライトとしての光量が足りなくなります。

総評
ELシート以外はどうしてもワイヤー周りと取付の問題を解決できないと手を出せるものではありません。
専用として入手出来ても改造する勇気が必要となります。
OLEDはコントラストが魅力ですが強烈に明るいわけではないし寿命も焼けもあるので強くお勧めしません。黒字に白ならスモークシールを張るとか工夫が必要です。
LEDバックライトは取付問題が無ければ一番良さそうです。
ELシートは蛍光灯を交換する感覚です。問題が発生しない分、よい選択だと思います。
 
これを書いた理由は、液晶ユニット一つでもこんなに考える事があるのを知っていただくためです。
技術的に難しい内容を読んでいただき、ありがとうございました。

ここで一句。

夕焼けも
愛機も焼ける
1000時間。

(やばいよやばいよ(C)出川哲郎)

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