ACE TONE TOP-6修理してみる。その1

 TOP-6知っています?

ACE TONE社のTOP-6は1960年代のセールス的にも成功したコンボオルガンです。トランジスターオルガン、ポータブルでTOPだとかConmo Organ Heavenにはありましたがどうなんでしょう。後の1969年かなぁ。電子オルガンの開発はKorg、Roland、Yamahaにとって重要だったに違いありません。Rolandはこの後設立ですがYamahaはリードオルガン(足踏み式、電動式、そしてYC-10)Korgは京王オルガンですからね。ICとかOpAMPとかそういう時代の電子楽器ではないので以下のような特徴があります。

  • PNPトランジスターで発信、分周、フィルター、ミキサー、トレモロ、アンプを設計している。
  • 負電源で設計されている。
  • 基板の素材は紙エポキシで片面に手書きのパターンが描かれている。
基板が反ってるけどパターンが切れてなければ大丈夫。

 
  • フラットケーブルが存在しない時代なので9Pin以上は基板自体をソケットとして利用している。これはアーケードゲーム基板にも同じ構造が使われる事になる。
抵抗の銀色が映えています。

 
  • 鍵盤数以上の発信器を備え、鍵盤のSwitchは3回路ある。つまりシンセのように鍵盤の押した情報で発信するのではなく、発信した音が鍵盤のSwhitchに3音流れたり切れたりする。これはハモンドオルガンのを模したからこうなっている。
  • 抵抗のカラーコードの最後が銀ッ!電解コンデンサーのメーカーがFOXゥ!そして特殊な4uFッ!ブリッジにセレンって書いてあるッ!真空管の時代かこいつは!
黄色いのが4uF。

 

分解方法

横のネジを外せば開きます。上下は基板で出来た端子とエッジコネクターとで繋がっているので外せば分離出来ます。

故障個所の把握

売主の云ってた「電源投入時に爆発。発煙した。」という痕跡が無い。電源とオーディオ出力関係が一緒になった鉄の箱があるのでそれを外すとパーティーで使うクラッカーの紙テープのようになったZEUS社のオイルコンデンサーの残骸を発見。既にオイルは無く、抜けた状態から電圧がかかり爆発した模様。色々メンテナンス箇所が見えてきました。



爆発の力でハの字にコンデンサーが開いた。
元はこんなだったはず。
 

ここがヤバイ。

  • ヒューズが無い。サージ対策。EMI対策が無い。EMIはともかくヒューズは付けてほしかった。
  • -25V,-18Vを作っているようだが-25Vに一本の40オーム抵抗を噛ませて-18Vを作っているのは安く作り過ぎです。負荷で-18Vが不安定になりかねません。二本の抵抗で正確に分圧するのが正しいが、私は立派なトランスから2系統を真面目に設計しているアンプばかり見ているので笑えない。
  • -25V作るのに使用している電解コンデンサーの耐圧が25V。耐圧を超えた分熱に変換されやすくなり膨張、収縮を繰り返して寿命が短くなります。-25V作るなら50V耐圧の製品を使うのが今の考えです。
  • 昔は+線が強調表示されていた。数年で-線表示で統一される事になる。

  • 熱の逃げ場所が電源ボックスとキーボードくらいしかないので周波数は安定しますがコンデンサーにとっては厳しい環境です。 なんで穴あけないんだろう?
  • 線が細い。グランド線が細い。すべてが細い。どうしてもYamaha YC-10と比べてしまう。SN比に影響がありそうだが改善すると楽器としての味に影響が出てしまうので取り替えません。線も楽器の一部です。YC-10より倍音も多くてワイルドでいい音です。 
  • ZEUS社のポリエステルフィルムコンデンサー(マイラーコンデンサー)が小さな容量から割れている。この症状は主に耐圧を越えて使い続ければ物理的に小さな物から熱劣化する。使われているのは50V耐圧品なので大丈夫なはずだが、どの時代も不良品は存在するので交換する。印刷表示すら確認出来ないので取り外して容量を測定して交換する。いくらビンテージでもここまで劣化が進んだマイラーは見たことが無い。フィルムコンデンサーは劣化すると容量が減る。電解コンデンサーは増える傾向がある。発信器の基板をまだ見ていないが交換するとなると300個近くマイラーを用意しないといけない。修理費用は凄い事になる。KorgのVC-10をレストアするようなもんだ。
放熱板のそばで平気な電解コンデンサー
割れている。色がおかしい。印刷は元から良くない。


  • FOX社のアルミニウム電解コンデンサーが液漏れも無く誇らしげにしている。ZEUS神より狐は優秀じゃん。なんて狐には騙されません。全交換です。4uFは3.3uFに置換で。20%の誤差で重なるので問題ないし、1000時間使えば容量もちょっと上がる。
  • 基板ソケット&コネクターのコネクターの樹脂劣化がヤバイ。ピッチとピン数さえ合えば何とか交換できるのだが果たしてあるんだろうか?運次第。
  • 回路図が無い。Ace Tone TOP-7 Owners Manual ならあった。電源を見ても同じなのでこれだけでも充分です。

これならMIDI化出来る?鍵盤がYamahaと違う構造なのでもしかしたら出来るかもしれません。まず直しながら考えます。


エンブレムの塗装が剥げているので錆び取りして脱脂してマスキングして隙間に艶消し黒のスプレーして元通りです。

 


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