4558D艶ありは部品取り品ならあるよ。

今回はIbanez TS9のビンテージ化の話です。

初期のIbanez TS9 TS808買えばいいのでは?え?10倍ですか?いいお値段ですね。
じゃぁ現行品のオペアンプ交換しましょう。
NJM4558Dですよね、艶あり?艶なしはだめ?DXだめ?DVはOK。DFもOK。わけわかめ~。
じゃあ調べてみました。

オペアンプICの系譜。4558はオーディオ用。

よい説明がありましたのでリンクを張ります。
 
 
uA741のビンテージはCANパッケージです。この時代はPNPトランジスタで設計した方が安いのですが、技術者が何も考えずにいい結果が出て速く設計できるので使ってみたいなーと思いました。もちろん歪ませようなどとは考えません。これ1つに400円以上払うかという問題だけでした。
uA741の歪み音、好きですよ。 

NJM4558の系図。

メーカーの資料に加筆しましたのでご覧ください。
②の付くチップは交換可能です。参考までにuA741のGB=1MHzです。
 
こうしてみると4560で設計が固まり、分岐しているので、一般的に考えれば4560以降の歪み方は似たものになります。GBは簡単にいうと「その周波数までなら綺麗に反応出来る性能を持つ」という値です。
4558,4559,4560はアイデアや迷いのある設計なので歪み方は違う・・・可能性があります。
(中の人ではないので公言出来ません) 
 

どう試したらいいか考えてみましょう

型番違い。

広帯域・低スルーレートは半導体部分の同機能以上の別回路で改善します。付けたし・改造です。
保護回路、保証回路、多重化、定数変更、良素材選別等歪まない方向に関してはいい進化ですが歪ませたい人にとっては「違うモノ」になります。
4558数種とNJM4560とその亜種の聞き比べが良いと思います。 4558系以外は後述しますがTA75358Pが好みです。
NJM4558DとNJM4560の違いは明らかでも、NJM4560とその亜種の違いが出ない可能性があります。
 

同型番選別品。

1985年以前の機械からNJM4558Dを取り出すのが確実ですが、それが高額だったり、年数を確認するのが面倒なので、選別品を基準に入手しましょう。
 
選別品とは、NJM4558Dを生産した中で半導体の質によって低ノイズだったり一定の基準を満たすとNJM4558DD,NJM4558DF,NJM4558DV,NJM4558DXといった型番でオーディオメーカーに納品した製品です。性能が良く、ロットでばらつきが無いです。
 
設計図が同じで、違いは無いはずなんですけど、NJM4558DXは評判が悪いです。
 

某社のNJM4558使用遍歴をしらべてみました。

1978以前は皆無です。別のIC、HA1457,TA7136P,AN374,BA311F等です。
1978~1980年まではNJM4558D。更に選別品はNJM4558DN
1980~1985年まではNJM4558DV。
1985からのNJM4558DXは艶が無くなりパッケージの機械が変わった(あるいは工場が変わった)時に原料も変わった可能性があります。
 
ジャンクを購入する際の指針としてお使いください。
もちろん回路図があれば確認する事をお勧めします。
機種名、発売日、標準小売価格、使用オペアンプを書いたスプレッドシートを作りましたがこれを公開すると修理する自分の首を絞める事になるのでやめておきます。
 
艶の有無で音が変わるというのは見分け方として間違ってはいませんがNJM4558DVでも後期はどうなんでしょう?当時の値段で400~700万の製品がNJM4558DV最後だという事はわかっています。運が良ければ入手しておきます。艶なしのNJM4558DVは見たことが無い。
 
インピーダンスの高いストラトキャスターやテレキャスターは解りやすいかな。
レスポール系やアクティブアンプが付いていると解りづらいと思います。
 

4558系以外の模索。

全てはuA741の設計から改良されてきましたので、その系譜と、同じピン配置の物を選択できます。
最近のオペアンプはヘッドルームが小さく高速なICが多過ぎて結局エフェクターに採用されたオペアンプを選ぶ事になります。しかも入手し易いとは限りません。TI社を基軸に描いてみました。
uA741CPを除き全て②です。


RC4558P

RC4558PはNJM4558Dの元となるデバイスです。 
 

TA75358P

TA75358Pは鍵となるデバイスです。
uA741を2回路いれてピン配置を汎用の配置にしてエフェクターに採用される要素を持った重要なICです。これはRC4558Pより視聴すべきです。下の方にNMJ4558の等価回路があるので比べて下さい。
等価回路を観てちんぷんかんぷんな人は「デザイン」として観ればいいです。理解は要りません。

 
TA75558Pは4558のセカンドソース品ですがそのまえにこのTA75358Pという4558には勝てないICを出しているので4558を元にしているというよりはTA75358Pを元に後から4558の回路を眺めて改造して作られたような気がします。東芝の開発者の方、これ観たら真偽をこっそり教えて下さい。
 

TLC272CP

TLC272CPは面白そうです。
MOS FETの嵐!
 
どんな歪みを起こすのかと思い、調べてみたらやはり先駆者がおりました。
 

すばらしい。技術者的にはこういう倍音がTS9には必要です。OPA2134?BBのFET系か。
CMOS系はTI以外にもあるので面白いのあるかもしれません。

TL082

TL082とTL072は鍵となるデバイスです。
よくエフェクターで使われています。高域の処理量が増えます。中身はほぼ4558の改造版です。
図はTL07xの等価回路です。
こうして中身をバラされるとFETだから真空管に近いだのと云う程FETは無く、騙された感たっぷりですが、確かにFETを出入口だけ使っているので嘘ではありません。より真空管に近付きたいならCMOS系がいいと思います。
入力部分だけで歪ませているわけでもないので、FETによって高域が通るようになった感じでしょうか。
TL072もTL082も出音に見分けがつきません。修理屋ならTL072のほうが選別品のような扱いなのでTL072を購入しますし、日本では入手しやすいNJM072Dになります。

番外編。高級オペアンプの模索。

現代の高級オペアンプは4560のようにGB値が高くなりビンテージ感は無いです。
そもそも歪ませる事が重要なので高級オペアンプが良いとは限らず、ヘッドルームが規格以上なのがいい方向に歪ませてくれるであろうと期待するだけで正直勿体ないです。
 

JRC以外のパーツの探し方。

日本のオーディオメーカーはほぼJRCを使っています。勿論NEC,三菱,東芝のように自分でセカンドソース品を作っている所は除きます。つまり他社の4558が欲しければその時代のメーカーの家電から見つけることが出来るはずです。
TI?困りましたね。観たことがあるのは確かですが9割JRCです。
 
  • ビクターはオペアンプで楽をしないでフルトランジスター設計が多いです。
  • パイオニアはNJM4558DXかuPD4558C。自社のカスタムICも作ります。
  • テクニクスは既にオペアンプを単体で使わず独自にカスタムIC化を進めて使われません。
  • NEC、オーレックス、ダイヤトーン、JRC以外の4558は取れます。同じ4558でも既に高性能に改造されているので音は試さないと解りません。
そして安く入手出来ないとね。これは宝さがしです。他のメーカーで探してください。
ヤフオクでざっとみると1990年代が多いです。まぁ仕方がありません。コツコツ1980前半の製品を探しましょう。
 
ちなみにシンセのメーカーでいいますと、
  • YamahaはNJM4558DX好きで4556D 4560DD 2068DDと完璧に固めて手を抜きません。
  • Rolandは4558使いません。常に攻めています。ROHM製のはあったかな?BOSSの方を探した方がいいかも。
  • CASIOは4558使いません。別の意味で常に攻めています。
  • Korgは入ってますが・・・。1985以前の物から取るにしても中古価格が高いですよ。
 
結構4558系の古いICを多種持ってます。
動作確認してお試しJRC4種セットとか売りましょうか。
綺麗な処理をする為のICがまさか歪みに再利用されるとは数奇な運命です。
ここから先はさらに番外編の番外編。

ビンテージを超える4558を作るという選択子はどうでしょう?

ビンテージシンセサイザーの修理においてはICが入手困難なものを等価回路で作ってしまう事があります。要は結果が同じであれば良いのです。同じ考えで、初期の4558の入手が困難な場合、真面目に探すよりも出来の悪い4558を自分で作ってしまうという選択肢です。
ICにはデーターシートという仕様書があります。そこには等価回路というのがありまして、そのまま作ると出来の悪い4558が作れてしまいます。
アンプとして出来が悪くとも歪みを得る為の回路なので自分でクリッパー部分のダイオードを作るようなものです。
上のベースが突き抜けているのはTL07xのように横3つのベースが接続しているという意味です。

 左上のトランジスターを貫通してる部分はクセがある回路図ですが、それ以外はトランジスターの回路をよく見ている人ならバイアス抵抗と負荷抵抗しかないのでセオリー通りに作ってしまえばいいのです。
V-付近のコンデンサーは40uF~100uF,
下一列の抵抗は全部1K~2KΩ,
V+付近の抵抗は1K~1.2KΩ,中央の抵抗は全部500~1kΩで。
中央のコンデンサー+ダイオードは適当で。
シミュレートして中央のプッシュプル回路で0V付近がうまく動けば出来上がりです。
右下のダイオードは逆向きにツェナー1つがNJM4558(14558でない)では使われていました。
TL07xの等価回路のように答えがちょっと見えるデータシートもあります。
1980年頃のトランジスターを使えば近い音になるでしょう。
 
回路の解説は結構ありました。抵抗値等はありませんけど。
 
 
 
electrosmashの所では新旧4558Dチップの性能違いは無いと書いていますが、私はこれには異論がありまして、まず規格通りには同じ性能ですが、選別品が多くあるという事実から、新旧の工場で使用していた素材が違う為、過入力時のインプットステージと上部カレントミラー群の性能が規格外動作の時、動きが違うのではないかと考えています。
自分で作るメリットはビンテージ方向への歪み具合のカスタマイズに尽きます。中央横一列に高雑音、高歪率、低周波数なトランジスターをもってくればuA741を超える酷いオペアンプとなります。デメリットはこの回路は1/2しか無いので同じ物を2つ作って8ピンにするにしてもその面積は大き過ぎてTS9には収まらないという点です。そしてトランジスターの性能が均一でないので1台作って成功しても2台目は同じとは限りません。しかしそういうのを気にするのは技術者だけです。興味がある人は是非チャレンジして結果を教えて下さい。

uA741を2個+変換基板を使って4558Dを置き換える方法もあります。

変換基板が垂直方向に伸びたり縦横に伸びるのでTS9に収まるかどうかわかりませんが気になるならチャレンジしてみて下さい。

uA741直系の2個入りは、MC1458P,LM1458,HA1458,N5558,SN72558という1458系だそうです。
EMS(!!!)が741と一緒に使っています。EMSがこの時代なんですね。

おまけの話。

コンデンサーに輪ゴム(ハチマキ)を巻く。スピーカーのように振動しているので効果が無いわけではありません。輪ゴムの劣化を考えるとグルーガンやSPORTS GOOで固定すれば良いかと思います。そこまでやるのはオーディオマニアです。
ICを銅シールドしてしまう。強烈に雑音が無くなりますが上からL字に曲げた銅板を張ってグランドに落とせば充分です。そこまでやるのはアマチュア無線家かPCのサウンドカード改造マニアです。
やっぱり真空管。それをするなら真空管のギターアンプをエフェクターとして使い、もう一台のギターアンプで鳴らしましょう。プロの方でも簡単なのでそうしてます。それが出来ない人のアンプシミュレーターやチュ-ブスクリーマーです。

コメント