小型D級アンプICのノイズ対策が気に食わないので再設計してみた。

D級アンプのノイズ対策をしてみました。

普通に入手出来るものは3cm角の基板に5mm角のIC1つ、1μFのチップコンデンサーが並ぶいわゆるサンプル回路通りに出来ているわけですが、
  • MUTE回路
  • シャットダウン回路
  • 歪まないリミッター回路
  • 出力のノイズ対策
が抜けています。
安くて小さくて大きい音を出すのですが、300kHzを基準とした毒電波が発生しております。
ICの中にツェナーダイオードが2入っていてそれもホワイトノイズが出ているであろうと仮定しています。
これが気に食わないので、3つ対策します。
  • 300kHzに特化したフィルターを追加(ただしコイルの精度で周波数にバラつきあり)
  • 電源周りにEMIフィルターを追加
  • ICやフィルター自体を囲ってシールド
シールド!最近見ませんね。ノイズの発生源を金属でかこってしまえばいいのです。特に表面実装基板でシールドやってるの全然見ないですね。基板設計が普通にできないですから。
フィルターは精度が悪くても4つも付けるので何も存在しないようにノイズの根源を消し去ります。

基板設計が普通にできないとは?

 

 
赤部分が表面の銅部分です。青部分が裏面の銅部分です。普通は裏面の銅を使って冷却し、シールドはありません。
上の設計では全てのピンを一度裏に通してシールドの外で表面に戻しています。当然放熱効果が薄れるので上からヒートシンクを付ける事になります。4層基板はヒートシンク替わりになりそうですがその引き換えに高額です。
ICの厚みの分浮き上がった状態からの放射ノイズを減衰させます。 裏に通す意味もこれです。横か上下に電波が出ますから。

フィルター設計

フィルターは設計が難しいです。
コイルを大きくするとより狭帯域になりますが何せ精度が悪くて20%もずれようなら数dbしか減衰してくれません。
逆に小さくすると広帯域になって20kHzにも影響が出ます。いい具合になるまでグラフとにらめっこです。
実際にはLの誤差を吸収するためにCを5つも用意したのでCを追加、除去する事になるでしょう。
測定器があると便利ですがスペクトラムアナライザーは個人で持つ測定器ではないですけどこれがあればノイズの周波数が見えて特定できます。無ければファンクションジェネレーター(FG)ってやつです。300kHzを発信させてこのフィルターを通すとAC1Vが激減しているはずです。310kHzでどうでしょう?290kHzでは?一番低い電圧が共振周波数です。 
自動で周波数を移動する測定器はスイープジェネレーター(SG)と呼ばれています。FGより何倍か高額ですがスペアナ並に効率がいいです。
大体10000pFで8.3kHz動きます。

ではWeb上で設計図から製品まで発注できるEasyEDAで描いた回路図で観てみましょう。
 

全回路図と説明。

 
電源にEMIフィルター。出力部分はコンデンサーがいっぱい。

取付ネジのグランドは基板設計後に電源に近い1つだけが接続される予定です。
フィルターの空間が長いので100x50mmくらいの大きさになる予定です。 
EMIフィルターはこの場合何でもいいです。狙う周波数が1MHz以上のフィルターですのでどちらかと言えば電源からのノイズに効くものです。何でも守ってくれそうなEMIフィルターは@150円と結構高額ですが、私はディスコンになったEMIフィルターを数万個持っているので使い放題です。設計して使いたい方はご連絡ください。
音声ラインにEMIフィルターを使った事が無いので今回も使いませんでした。だれか実験して下さい。
さて。電解コンデンサーを使っておりません。
そして入力と出力には特殊なコンデンサーを使っています。これが海外では一番高額です。
これがねぇ。
音に期待してるんですよ。
電解コンデンサーは表面実装では悪者ですからね。
固体コンデンサーよりフィルムコンデンサーでしょう。
うんうん。
 

パワーアンプICの回路図集

 
D級に限らずとも今までラジオやテレビで松下・三洋・三菱・東芝・日立といった日本の家電メーカーががガンガン製造してきたのでその回路図を観ることが出来ます。オランダのサイトなんですがリンクを貼ってしまうとダウンロード出来ちゃうのでそれは良くないので自分で探してください。オランダのラジオ歴史協会のサイトに電子オルガンの作り方の詳細資料とか真空管オルガンのビブラートをモーターでボリュームを動かすとかオランダの電子音楽資料やアマチュア無線の技術の高さがわかって面白いです。(ただし英語ではない)

5000 integrated circuits power audio amplifiers databook

これにはPAMはまだ載っておりません。古い本ですから。
あくまで最低限の評価用回路図なので電圧を変えた場合や入力レベルの違いとか目的に差異がある場合全て順調に動くと思ってはいけません。電池で動くラジオ用とテレビ用は別のICである事をお忘れなく。そしてシンセサイザー用というのは無いので入力の仕様に変換して使用します。
 
さぁこれから秋葉原までYAMAHA SS-30のタンタルコンデンサー交換用のコンデンサー買ってこよう。すげー量必要だ。

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