Yamaha SS-30とは?
Yamaha SS-30は1977年12月発売のストリングスシンセサイザーです。モノフォニックシンセのCS-10も同時期デビューでした。
CP20 \185,000 1977/12/1
CS10 \82,000 1977/12/1
CS30 \185,000 1977/12/1
CS30L \215,000 1977/12/1
SS30 \225,000 1977/12/1
CS10 \82,000 1977/12/1
CS30 \185,000 1977/12/1
CS30L \215,000 1977/12/1
SS30 \225,000 1977/12/1
値段的にはCS30Lよりも上です。
歴史的にSelmar Claviolin(奇抜な音)の後にメロトロン(不思議な音)。その後にソリーナ(豪華な音)が流行してKORG PE-2000,Roland RS-101,202,YamahaがSS-30を発表します。
トップオクターブ音源に1キー毎にバイオリン波形生成フィルターを載せた「フィルターモンスター」です。
壮絶な数のコンデンサーの量! |
コーラスにBBD512段を3つ積んでBBDの50kHzクロックの位相をずらして3音ミックスしています。Yamahaとしてはソリーナに勝とうと思ったに違いませんが、このエコーが大人しい事でソリーナのエグさに負けてしまいした。ただし、世の中にはその良さも評価してくれるミュージシャンもいます。(Ultravox)
なんでBBD使ったのかな?フェイズシフターのほうが良かったんじゃないかな?でもこの当時BBDエコーは最新デバイスのエフェクターであったこともありRoland(BOSS)も睨みつけて「コンパクトビューティ」を表現したかったのかもしれません。
そんなSS-30の不動品の修理記録です。
SS-30の修理ポイント、まず電源!(ビンテージ家電全般に有効)
なぜかって動かない原因がある程度わかっていないと電源を投入する事によって更に部品が壊れる事があるからです。
やることは「電源基板と他の基板との接続を外して単体テストを行う」事です。
作業前確認
- 埃を掃う
- 部品やネジが筐体内に転がっていないか確認する
- 電源を入れても漏電しない環境を作ります。空中に浮かんだままでもいいがシリコンやプラスチック板でシャーシに振れないような環境を作ります。安全第一です。
- 目視での異常発見
- FUSE切れ
をまず確認し異常が無ければACを与えて5Vや12V等の出力が正しく出ているか確認します。
希にネジやバネが電源基板にひっかかって故障していたりします。帯電防止の為に植物や動物系の刷毛を使います。プラスチック系はNGです。
紙のシールが筐体内に散乱している事があります。UVROMの遮光シールや大きい部品に貼ってあった物です。後で張り直すか新調してあげて下さい。
電圧の確認
高い出力が出てたら本体のICが耐えられません。ですからむやみに電源は入れてはいけないのです。
出力が0Vなら本体基板がショートして大電流が流れて壊れたか基板が焼き切れたか熱で抵抗やダイオードが割れたかしているので「電圧を追います」ACからDCに変換して出力までにどんどん電圧は下がっていきますのでテスターで追ってみればわかります。
全て0Vの場合は「FUSEが今切れた」か「トランスが壊れている」可能性があるのでトランスの電圧を確認しましょう。定格よりちょっと高ければ正常です。トランスは負荷が異常だと「鳴き」ます。半固定抵抗の調子が悪く、発熱していたりもします。普通発熱しません。交換すると電圧も安定するはずです。
触診
通電中トランジスターやダイオードや抵抗を触って熱の具合もみます。熱で故障して性能が出ていない可能性があります。抵抗も熱は出ますが異常に熱い(80度以上)とその周りの部品が壊れているかもしれません。「触り方?そりゃ感電しないように触って下さい!」コイルは感電の危険が高い為、紙を挟むなり薄手のゴム手袋でもして安全に触りましょう。勿論基板や足に触ったら感電します。ご注意ください。火花と共に爪が溶けます。
回路図
サービスマニュアルがあると解りやすいです。経験ある方は観ただけで解ります。
運悪くスイッチング電源だった場合お手上げ?
スイッチング電源の場合、現代のスイッチング電源が大幅に進化しているので新調した方が小型になっていい事もあります。
意外とネジ位置の合う電源も多いです。規格があるわけではないが大量生産の影響です。
かろうじて正常なら電解コンデンサーの交換が必要
もう寿命ですのでReCAPしましょう。
ちなみにSS-30のPSU部分のコンデンサーの表です。
こうやってみると当時のコンデンサーは3倍大きくて足のピッチが現代だと一段小さくなります。なので何も考えずに買うと足を広げて差すことになり、美しくありません。ホットボンドで固定する事になります。耐電圧をわざと上げる、耐熱をわざと上げる、用途を確認して容量を上げるなど考えて購入しましょう。
リプルの取り方のセオリーは1000μFの次は1/10の100μF、次は10μF と下げて、出力の2倍以上の耐電圧で耐熱が高ければ寿命も永い。
これで50年は安心して動きます。
上のような表を作って購入の参考にします。コンデンサーだけで128個です。
表要ります?
悪しきコンデンサー、その名はタンタリウムキャパシター、aka「タンタルコンデンサー」
さて電源は動きました。次は全ての基板にタンタルコンデンサーがいくつ使われているか調べます。
何故かというとタンタルコンデンサーは壊れるとショートした状態になるからです。
仮に今動作するSS-30があってもそろそろ壊れます。YamahaのCSシリーズも全く同じです。長持ちさせたかったらタンタルを排除する事です。
少し詳しく説明すると回路図でコンデンサーは縦と横に描かれていますが、縦にタンタルコンデンサーがあって、壊れてショートしていたら電源が悲鳴を上げてFUSEを切るというのが普通の設計です。横にタンタルコンデンサーがあって壊れてショートしたらその先は直流交じりの大きな電圧が流れていますので先のトランジスターやオペアンプ周りの入力が異常となります。部品が耐えられればいんですが・・・
SS-30の場合はタンタルコンデンサーが54個
青い部品が全てタンタル・・・悪夢だ。しかも6.8μF!抵抗も2個ずつ交換する事に・・・。 |
さぁ大変です。54カ所チェックするよりReCAPした方が無駄がありません。それにしても1キーに対して1つタンタルコンデンサーを使うなんて流石Yamahaです。1個200円位だったはずです。しかも困った事に6.8μFというタンタル独特の値で他のコンデンサーが使わない値です。
つまりReCAPする際にまたタンタルを使って壊すか、値を変えてタンタル以外を使うか。です。
回路図を観てみましょう。
パッと見て2経路のスイッチでタンタルに電荷を貯めるEG回路の様です。
チャージ電圧に方形波を入れて判断しやすくしています。 |
6.8μFを4.8μFに替えたら3.3kを2、3段くらい大きくしないと時定数が合わなさそうです。
時定数は14.96msと22.44msです。
4.7μFに変更した場合は3kと4.7kで1.21ms早くなりますが波形で観るとその誤差は充分の様です。
10μFだと1.5kと2.2kか、0.48msこちらは心配ない値です。
こういう時シミュレートはコピペで複製出来るので便利です。
抵抗は49x2=98個交換か。しかも正常な2.2kを外して新たに2.2kを付けるなんて
なんでこんな部品使ってんだ・・・呪われている。
Yamahaの高級部品自慢が今となってはコピープロテクト同様の呪われた設計となっております。
使えば使う程アタックが早くなってショートして上のトランジスターが異常発熱・・・いや2,2kがあるから壊れはしなさそうです。
じゃぁここ以外が壊れた可能性が濃厚です。
という具合に修理していきます。
(このあと1.5kが40本しか所持しておらず秋葉原に行くのでした。10μFは1000単位で持っていますが今回は50年後を見据えて積層セラミックにしようかと思います。積層セラミックでX7Rな部品を1000個発注中)
SS-30動作品をお持ちの皆さん。
もう小さい電解コンデンサーが寿命です。
壊れる前にReCAPしたほうがいいですよ。
大きいのは頑張れるとは言え液漏れしたら基板が錆びます。基板が壊れたらえらいこってす。
最後に書き忘れていた事があります。ネジの話です。
3枚基板を縦方向に鉄ケージに収める構造になっているのですが、柔らかい軟鉄ネジが使われています。
そもそもメンテナンスを考えていなかったのか、高トルクで締め付け過ぎてまずネジが壊れます。つまり外すのが困難です。
ネジザウルス必須です。この3mmネジ8mm長のフランジネジは一般には売っていないので一般に売られている3ピースな座金組込ネジを6本用意しましょう。真鍮かステンレスかと云われたら私ならステンレスを選びます。錆びて苦労する事が無いからです。
当時のネジ品質はYamaha歴代の中で最低品質です。
ネジザウルスをお持ちでなければ油(CRCでもWD40でも高浸透な油)を綿棒につけて横から浸透させて貫通ドライバーで叩きながら(潰しながら?)全体重をかけて回します。
そのくらいネジが酷いです。
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