githubのjjmz / Atari-Quadrature-USB-Mouse-Adapterのコネクターを半田付けしてみた。

半田付けのレクチャーしておきます。

今回は表面実装以外のパーツ取り付けです。
視力の弱い方はより拡大して作業できる環境が必要です。半田が溶ける状況が把握出来ないと作業出来ません。
怪我の無い様、安全第一でお願いします。

半田付けに必要な物

  • 半田ごて
  • 半田
  • 第3の手
  • フラックス
  • 耐熱シリコーンマット

今回半田付け道具であった方がいい物は刷毛塗りタイプのフラックスくらい。
フラックスは接合してほしい部分に塗るとそこに誘導される効果があります。
半田こては18w~40w級。2.54mmピッチの半田付けが出来ないような先が太くて大きいものは使えません。 
鉛37%スズ63%に太さ0.5mmに近い共晶半田。ここで銀入りだの銅入りだの贅沢しても音質に影響はありません。
ただし最初からスズ90%以上の鉛フリー半田の環境であれば鉛入り半田の使用はNGです。こて先に鉛が付着すると鉛フリー半田の強度が失われます。結果として捨てる事になりますので注意しましょう。
あとは基板やコネクターを持ってくれる第3の手、でしょうか。無ければラジオペンチに輪ゴムでもいいです。割りばしではダメかもしれません。そこまで何も無い状況では作業しないので。
人間の手は火傷してしまうので頼まないで下さい。

半田付け道具以外に必要な物

  • テスター 
  • USB転送ケーブル補強の為、1mm程度のスズメッキ線が20mm程半田メッキ後2本に分ける
  • DSUB9メスコネクター(ケーブル用)
  • USB-Aメスコネクター(スルーホール基板用)
  • USB-Aオスコネクター(スルーホール基板用) x2

工程

半田付けには順番があり、低い高さの部品から高い高さの部品を取り付けます。工程を自分で考えましょう。何も考えずに作ると最悪の場合基板を捨てる事になります。
  1. 部品が意図した物か借り組みしてみる
  2. DSUB9部分の予備半田メッキ
  3. DSUB9を垂直に整え1ピンだけ半田付け
  4. 再度溶かして微調整
  5. DSUB9の半田付け
  6. 目視確認
  7. USBコネクターの半田付け
  8. テスターにてUSBコネクターのフレームとDSUB9の5ピン側全てが絶縁している事を確認
  9. 2つのUSB-Aオスの全端子とスズメッキ線を半田メッキ
  10. USB-Aオス2つをクロスした状態で半田付け
  11. 温度を上げて短時間でスズメッキ線をフレームの両サイドに半田付け

解説

 1.先日説明した通り、微妙な誤差があるか確認する。問題の分部はこれ。

 横の白線が見えるのでUSBはクリア。でもこれでは今後の作業に不安が残るので、0.5~0.6mm短くするようフットプリント側の修正が必要とわかりました。
jjmzさんの設計は表面実装のコネクターを使っていたので、それが小型化を邪魔していた事を私は理解していました。
 

DSUB9のピンの長さもクリアしています。
USBのフレームと基板の間は1mm持ちあがる事になります。こんな構造だと抜き差しを繰返すと基板に負担がかかり断線起こすのは当たり前ですよね。フレームを使ったロック機能もすぐに効かなくなる。
 
2.DSUB9のピンの外側の間隔は1.34mm±0.15。基板の厚さは1.2mm。0.14mmの隙間を半田メッキで狭めて扱いやすくします。基板側9ピン分を薄く半田めっきします。半田メッキの厚みは個人差がありまして、私だとメッキしてもかなり緩い状態です。視力の弱い人はルーペの使用出来る環境をお勧めします。
演出画像です。実際は基板固定して下さい。

3.1ピンのみ半田付けし、垂直・全ピンの位置決めを行います。360度観察しましょう。
 
4.ずれてたら仮止めの1ピンを溶かし納得いくまで微調整します。
 
5.9ピン全て半田付けします。

 
6.目視確認。全ピンの接続と流し込んだ半田の量が均一なのが理想的です。
 
7.USBコネクターを1ピンだけ半田付けして1.で観た1mm程の空きがある状態を確認してください。空きが無い場合はフレームを強く掴み過ぎ、2mm以上空いている場合は差し込みが浅いです。再度溶かして精度を高めて下さい。位置決め出来たら4ピン全て半田付けします。 フレームは表裏ちょっと盛り上がる程度の半田を一気に短時間に使います。温度調整出来るなら+20度にすれば簡単です。私は1度で簡単に出来ますが初心者はまず「穴が埋まり平面以上になるまで半田を溶かす」事に全集中しましょう。裏を観ながら半田付けするのは無理ですが経験でカバー出来ます。どんどん経験しましょう。
何が起きているかというと、
流し込み始めはフレームや基板に半田が付き始めます。 
周りに熱と半田が伝わり始めた結果、一度引っ込んだように見えます。
どんどん半田の量が増え「)(」を横にした状態から「) (」となりフラットあるいはそれ以上になります。
この時点でかなりの強度が得られます。これを複数回や長時間で行うと強度が低くなります。
 
8. テスターにてUSBコネクターのフレームとDSUB9の5ピン側全てが絶縁している事を確認します。接触してたら大失敗です。廃棄しましょう。
テスターって先がとがった2本線ですが、テスターは1点に集中すべきなのに2点を気にしなければならないという矛盾のある測定器です。せめてグランド線やフレームはくっ付いていて欲しい。ですよね?
ワニ口とICクリップのケーブル。
こういうケーブルを作っておけば1点の測定に集中出来ます。 測定しながらボリューム調整も出来ます。便利ですよ。
秋月電子で買ったテスター棒のキャップを4mmカット
ごちゃごちゃした空中配線の中の測定には触れてほしくない部分が多く、測定困難な時、こういう工夫をしています。
ただ秋月電子のこのテスター棒は錆か何かで接触不良でした。無水アルコール洗浄してOKでした。
 
9. 2つのUSB-Aオスの全端子とスズメッキ線を半田メッキをします。半田メッキというのは綺麗な状態の金属と高温であれば上手く仕上がります。フラックスがあると汚くても仕上げてくれます。全然半田が乗らないのは汚いか低温度だからです。最悪の場合ヤスリで削ってフラックスを付けて半田を乗せます。
 
10.USB-Aオス2つをクロスした状態で半田付け
この状態では超絶グニャングニャンなので補強が必要
表裏というか上下というか、全てがクロスした状態です。補強の単線をサイドに付けますが、USB2.0規格のUSB-Aオスの付いたケーブル2本を切って線を加工する方法もあります。どうやって線の色とピン番号を見分けるか?メスコネクターがあるじゃないですか。テスターで測って下さい。
USB規格は1ピンが+5Vで4ピンがGNDでフレームはどこにも繋がっていないのが正しいのにすべて反転しては電源が逆転するのでNGでは?
その通りです。これを他のUSB機器で繋げるとPCを破壊するか電源が切れます。
このCPUの独自仕様です。正直怖い仕様です。なのでケーブルで作ってこれは便利そうだと思ってPC同士つないだりしたら困るのであえてケーブルを使わない専用コネクターを作って使い終わったら小袋に入れラベルを書いて封印するのです。手元にあるのは危険です。もしケーブルで作った人は使い終わったらあえてケーブルを切り、普段は使えない状態とし、部品として保存しましょう。
 
11.補強線の半田付け
フレームや単線は熱が逃げ易い素材ですので+40度高温であれば簡単です。そしてプラスチックが溶けないように短時間で仕上げなければなりません。
今回VVFケーブルで補強します

 
芯線を抜きます


半田メッキします
 
 
この状態で半田出来るかな?

全然溶けませんね。
100Wのコテで付けました。
VVF線だと強度あり過ぎwwwびくともしない

 これ普通のコテでは無理でした。1mmスズメッキ線をお勧めします。1.6mmや2mmは物凄い強度ですが100W級のコテを所持する事は稀です。ちょっとこの企画は失敗でした。

コツは
  • コネクターを固定
  • 単線も真っ直ぐに固定
  • 線の上から半田を溶かし始める。押し付けるほど力を掛けない。
  • フレームに半田が溶けた時点で半田ごてを離す
固定がうまく出来ていれば全て順調なはずですが、難しいのは環境や工夫の問題です。
お疲れ様でした。これでハードウェアの準備が整いました。 
半田付けのレクチャーしてない?
いいえ、半田付けする殆どの時間はこういった環境と計画に時間で失敗しない点と仕上がりが良くなります。
どんな奇抜なテクニックでも溶けて繋がれば間違いではありません。
あえて溶かす部分について語るなら

半田道と云ふは己の心と見つけたり。

写経のように目で見、全集中の呼吸から仕上げる職人技です。プリント基板の出来で仕上がりも変わりますがほぼ己の状態が作品に現れます。そして区切りはつきますが終わりはありません。
頑張りましょう。
80年代は浜松や大阪のパートのおばちゃんが最強ですね。
そういえばサトシは勝つことででポケモンマスターになれたんでしたっけ?
東方不敗レベルまで行くのだろうか。

遊びの話

牛乳パックの底に石膏を流し彫刻刀で彫り物をして半田を流して遊んでみるのも一考です。木の端材でもいいです。溶かす量を把握できるし、流し入れるには1mm程度のドリルで空気を逃がす穴も必要です。銀細工やプラモデルの世界にも通じる技ですね。



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