Yamaha KX88の鍵盤おさえフェルトを交換改造。私にとって、たった3mmの見栄えが音楽制作に及ぼす影響は計り知れない。

KX88とは何か?

KX88は1985年1月1日発売の音源を持たないマスターキーボードです。ME鍵盤と呼ばれる重たい88鍵は、その後Korgの最上位機種にも採用されています。 私的には鍵盤が戻るスピードがYamahaのグランドピアノに近いので幾ら重くても好きです。
何より素晴らしいのは、現代の故障や変色といった問題が全く発生しない高耐久・超高信頼性な鍵盤です。
全くというと語弊があるかもしれませんから現代の256倍は高耐久だと言っておきましょう。
逆に現代の電子ピアノの鍵盤は半分以上「skip it!」と言いたいレベルなのをご存知ですか?

鍵盤おさえフェルトとはどの部分か?なぜ改造が必要なのか?

それはともかく、このME鍵盤、ピアノの鍵盤を模しているのに見た目が悪いというか私的に納得いかない部分があります。鍵盤の付け根部分のフェルトが黒色なのです。1978年発売のCP80も黒でした。メーカーの戦略としてわざと採用しているとしか思えません。赤か緑であるべきです。
これの効果は幼少からピアノに慣れている人なら脳内でデフォルトモード・ネットワークが動き出すのでとても良い作曲・演奏が行えます。
改造後の赤フェルト
オリジナルは黒フェルト
どちらがcoolですか?

 
フェルトは浜松方面に特注しました。 


構造の説明。

構造は上部フレームに8mm~10mmの両面テープで張り付けているだけです。
フレームから3mmはみ出していますが、正確に3mmはみ出すように張り付けるのは困難ですので、フェルトに両面テープを付けてから張るのではなく、フェルトを鍵盤に置いた状態で両面テープの付いた上フレームを閉じて押し付ける方法で行います。
 
フェルトが3mm見える。ただそれだけ。

先に上部フレームへのアクセスを説明しておきましょう。
サービスマニュアルをご覧ください。と言いたい所ですが、マニュアルが間違っていますので説明しますと、
 
  • 真上から見て4つネジを外します。短いです。
  • 真下からベンダーの下のネジ2つと逆端の(右端の)ネジ1つを外します。長いです。
左側手前の長いネジを2本、右は1本外す。

 
  • 両手の爪で鍵盤おさえフェルトを引っかけて持ち上げますと開きます。決してベンダー部分は持たないで!
 
サービスマニュアルでは真下の3つのネジとしか説明されていませんでした。
 

改造に必要な道具。

  • プラスドライバー
  • シールはがし剤
  • シールはがし剤の液垂れ防止の養生テープ
  • 刷毛か歯ブラシ
  • コーキング用へらか自分の爪
  • 不織布か赤ちゃんのお尻ふき
  • 掃除機
  • 10mm幅の強力両面テープ
  • ハサミ
  • 特注品の赤フェルト

フェルト以外は揃いそうなものばかりです。養生テープが写ってないね。

両面テープの接着剤除去作業が7割です。人間の爪は最も高性能な工具ですが、1230mmもの長さの接着剤を削り取るには爪を痛めてしまうので割り箸や竹串や消しゴム等工夫する事をお勧めします。あなたならどうやって大量の接着剤を塗装を傷めずに除去しますか?

シールはがし剤はスプレー缶のタイプは基板には吹き付けて欲しくないのでお勧めしません。
今回使っているものはプロ用で高濃度リモネンの凄く良いものですが、一般的には複数回で塗装に影響なく接着剤が除去できれば良いので高純度でなくても構いません。トルエン・シンナー・ベンゼン・パーツクリーナー等の塗装も溶けるような溶剤は使わないでください。一般的にドライヤーで温めると接着剤が軟化して除去しやすくなる事も覚えておくと良いでしょう。そしてスプレーのエアダスターで急冷し、固めた状態で掻き取る事も覚えておくと良いでしょう。
 

改造方法の説明。

  • 上部フレームを開けます。

  •  
  • フェルトを除去します。
  • まずはゆっくりと剥がしていきます。

     
    フェルトは残る、シールも残る。

  • 接着テープとフェルトがまだ張り付いていますので、シールはがし剤を使って除去しますが、基板への影響が心配なので養生テープで保護します。

  •  
    残ったフェルトを爪で剥がしていますがこれでは爪の内側が耐えられません。

  • シールはがし剤を垂れないよう少量使い、40年前の両面テープを除去します。1回では除去出来ないでしょう。

     
  • シールはがし剤を水拭きして乾燥した状態にしてリセットします。
  • 10mm幅両面テープをはみ出さないよう100mm毎に指を添えて綺麗に貼付けて最後はハサミで切ります。
  • こういうのは後のメンテを考えるとぴったりにはしません。
    両面テープを指の腹でしごいて剥離しないようにしっかり貼付けます。

  •  
  • 鍵盤の上に赤フェルトを置いてハサミで長さを調整します。手前に均一に引いて上フレームを閉じてみて見栄えを確認します。納得するまで3~4回は調整すると思います。
    最初は長さ調整です。

    全体を軽く引き寄せて調整します。

    一度きりで接着するので緊張します。

  • 上フレームにある両面テープの不着紙を剥がして閉じます。
  • 上フレームに付着した赤フェルトを指の腹で細かく押して弛みを無くします。

  •  
  • ネジを取り付けて終了です。
    当時としては随分強力な両面テープかと思われます。

見栄え。

脳内からピアノの記憶が接続されます。

ME鍵盤を辞めたKorgはその後暗黒の時代に。

今思えば粘着の弱い両面テープを10mm角を7つ用意してE鍵盤に張り、調整すれば失敗は少ないと思います。
その後7つ剥がせばよいのですから。次からはそうしましょう。常に現場の人間がQC活動を心がけるのが日本人の良い所です。
 
えーと次はKorgのT1かSG-1Dやりましょうか。それともLC鍵盤に挑戦してみましょうか?Rolandでもいいですよ。
上部フレームに張り付けられれば良いのですから。
この改造はマジお勧めです。 
RolandのJD-800?ぉぃぉぃ・・・ピンクの悪魔は勘弁してくれよ。
戻りのダンパーフェルトとアフタータッチフェルトまで特注しないと無理ですよ。接点のゴムは持ってるけど。

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